最初の二人


 この世の一番最初の話です。
一つの太陽が誰も知らないうちに誰もわからない方法で誕生し、その太陽の光の集まり方によって、例えば土は茶色い光が集まって、きれいな水は白と青が混ざり合って、石は白と灰色が混ざり合ってという風にでき、万物ができたその最後に動物や人間が生まれたのでした。
しかし、人間は誕生したくなかったのか光の集まり方がひどく悪く、生まれたのはたった二人だけ。
その上、どうしたことか二人とも女だったのです。
 男と女がいなければ子供を残せないのは今も昔も変わりません。
二人がそれを知った時、愕然とした事でしょう。
太陽とは違っていつかは体を作る光がなくなって、老人となって死んでいきます。
よって、人間は子供を生まなければならないのに、男がいないために子供は生まれないのです。
 いつも左側にいる女は「このままではいけないから、私が男になろうと思う。でもいろいろな物が失われるに違いないし、男になる途中ではあなたが私を世話してくれないと、私は男になる事ができないだろう。それをわかって欲しい」と、もう一人のいつも右側にいる女に言い、右側の女はそれに従いました。
 左側の女は、大量の毒の種や木の実を食べ、汚い黒い光が集まった沼の水を飲みました。そしてまた闇である黒い光そのものに極めて近い種類の汚い泥を体に塗りつけました。
そうすると、左側の女の体から見た事のない植物がうっすらと生えました。
次に右側の女は、左側の女にうっすらと土をかけ、泥をまた更に塗りつけたのです。
右側の女の務めもあり、少しづつ左側の女の体から植物は成長し続けました。
 でも、失敗もしていたのです。
きれいな涙を左側の女に流してしまって。

 右側の女は、左側の女の苦悶の表情があまりにもかわいそうに思い高貴な光そのものであるきれいな水であるきれいな涙を流したのです。
いかに闇でもある黒い沼の水でもそれを打ち消すことのできない物でした。
 それでも、植物は成熟し、大きな球状の実を作っていました。
そこから、苦痛の表情の末に干乾びた左側の女が男になっているはずでした。
ですが、出て来たのはきれいな透明な水の体を持つ人間でした。
その人は特定の姿はなく、女でも男でもなく、そのどちらにもなる事ができたのです。
 二人は不安でしたが、左側の女だった者は透明な男の姿を取り子供を生みました。
するとちゃんとした子供たちを産む事ができたのです。
こうして二人は多くの子供たちを産んだのです。

 最後の子供が成人する頃になって透明な水の体を持つ、左側の女だった人は女の姿に戻り、右側の女と体を作る光が失われなくなるまで一緒に住み、彼女らの子供は全ての民の礎となったのです。



 

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